水の神様も元気になる!失われつつある湧水文化の復活劇

古くから湧水が豊富な土地として知られる福井県・大野市。
この美しい湧水は大野市を城下町として発展させ、近代になっても飲料水や生活用水、工業用水など、さまざまな用途に使用されてきました。
さらに「名水百選」、「水の郷百選」にも選ばれることで、湧水は街のブランド化を確立する一助にもなっています。

しかし、環境や時代の変化とともに、湧水の枯渇をはじめ、古くから受け継がれてきた湧水文化の継承が困難な状況になりはじめました。
それに危機感を覚えた大野市は、湧水(郷土財)を守るために、官民学が協力し「越前おおの湧水文化再生計画」を策定。
国、県、市などの関係機関や大学、市民、企業などがそれぞれの役割を担うことで、古くから受け継がれてきた湧水文化を後世に引き継ぐ環境の創出に努めようと考えたのです。

この計画が発動したことで、同市の行政は「湧水再生室」を組織し、計画を進める中心部署としました。私はこの計画に関連する委員会の会長として10年以上活動に携わっており、国指定天然記念物の淡水魚・イトヨの生態などを紹介する市運営の施設「イトヨの里」の館長も務めています。
計画の内容は、水資源・水環境の保全と活用に向けて、条例の制定や基金の設立、市民に対しては、節水や湧水保全の意識向上のための啓もう活動などを実施。
「御清水(おしょうず)」や「本願(ほんがん)清水(しょうず)」などの名水スポットを観光資源として活用したり、福井県から認定された「ふくいのおいしい水」を前面に押し出し、観光PRを推進することで、町おこしの強力なツールとしても展開しています。その結果、第15回日本水大賞「環境大臣賞」を受賞することができました。

この計画は、本学のゼミにも活用されています。
一地方都市において郷土財「湧水」を保全・活用する特徴的な活動は、地域づくりを促進する好例と考え、この計画推進事例を紹介。
学生たちにとって、地方活性化のリアルなソーシャルグッドとして、多くの学びを得ることができたでしょう。

日本は東京の一極集中が続き、地方の価値が軽んじられているように感じます。
しかし、このような計画は、学生をはじめ、多くの方々が郷土財の価値を見直し、そこに暮らしていることへの誇りを取り戻すきっかけになると考えています。
その気持ちが、地域づくりを担う力を育み、ゆくゆくは地方の活性化につながるだろうと期待しています。


経済学部 森 誠一 先生

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